トラウマリリース
トラウマケアでは、つらい記憶を詳しく話さなければいけないの?|身体の反応から回復を考える - traumarelease

ブログ

トラウマケアでは、つらい記憶を詳しく話さなければいけないの?|身体の反応から回復を考える

2026.10.14

「もう終わったことなのだから、気にしなくていい」

「過去のことは変えられないのだから、前を向こう」

頭ではそう理解していても、過去の出来事を思い出すと、強い不安や恐怖、怒りがこみ上げてくることがあります。

もう過ぎたことだとわかっているのに、まるで今また同じことが起きているかのように、心や身体が反応してしまう。

そんなとき、自分に言い聞かせても、気持ちを切り替えようとしても、うまくいかないことがあります。

トラウマケアというと、つらい記憶を詳しく話し、当時の感情と向き合うことが必要だと思われるかもしれません。

けれども、過去の出来事を詳しく語ることだけが、回復への道ではありません。

身体の反応に注目しながら、今の自分を支えられる状態で過去の経験に向き合うことも、大切なアプローチの一つです。

この記事では、頭では理解しているのに反応が変わらないことがある理由と、身体に注目するトラウマケアについてお伝えします。

 

 

なぜ、頭ではわかっているのに反応をコントロールできないのか

 

過去の経験について、時間をかけて理解を深めてきた方もいるでしょう。

なぜあのとき、あれほど傷ついたのか。

なぜ人の顔色が気になってしまうのか。

なぜ相手に嫌われることが、これほど怖いのか。

自分の生い立ちや過去の人間関係を振り返ることで、今の自分の反応がどこから来ているのか、理解できるようになることがあります。

それは、自分を責めることから離れ、自分の経験を捉え直すためにも大切なことです。

しかし、理由がわかることと、実際に反応が変わることは、必ずしも同じではありません。

たとえば、以前に人から強く責められた経験があるとします。

現在、目の前にいる人は、過去に自分を責めた人とは違います。今の状況も、当時とは異なります。

それでも、相手の表情が少し険しくなっただけで、強い不安がこみ上げてくることがあります。

「この人は、あのときの人とは違う」

「今、責められているわけではない」

そう頭で理解しようとしても、不安や恐怖が強くなると、冷静に考えることが難しくなります。

過去の経験に結びついた感情や身体の感覚が強く立ち上がると、理性で自分に言い聞かせるだけでは、その反応をコントロールできなくなることがあるのです。

これは、頭で理解できていないからでも、意志が弱いからでもありません。

私たちは、状況を意識的に考えて判断するだけでなく、これまでの経験を通して身につけた反応によっても、周囲の出来事を受け止めています。

そのため、今は過去とは違う状況だと理解していても、似た感覚や状況に触れることで、以前の経験に結びついた反応が生じることがあります。

こうしたときには、考え方を変えることだけでなく、実際に起きている感情や身体の反応にも目を向けることが大切になります。

 

 

身体に注目することは、ただリラックスすることではない

 

トラウマケアでは、身体に注目するアプローチがあります。

身体への働きかけと聞くと、リラクゼーションやグラウンディングを思い浮かべる方もいるかもしれません。

緊張が和らいだり、呼吸が落ち着いたり、今いる場所に意識を戻せたりすることには意味があります。

不安や恐怖が強くなっているときに、自分を支えられる状態を取り戻すことは、過去の経験に取り組むうえでも大切です。

ただし、身体に注目することは、リラックスすることだけを目的にしているわけではありません。

もう一つ大切なのは、自分を支えられる状態を保ちながら、過去の経験に結びついた反応が、今の自分にどのように起きているのかを知っていくことです。

たとえば、過去の出来事を思い出したとき、胸が締めつけられるように感じたり、身体に力が入ったり、怒りがこみ上げたりすることがあります。

その反応を、無理に消そうとするのでも、勢いに任せて強く感じ続けるのでもなく、今の自分が支えられる範囲で眺めてみる。

自分の足が床に触れている感覚や、周囲に見えるものにも意識を向けながら、今ここにいる自分と、過去の経験に結びついた反応の両方に気づいていく。

そうすることで、反応に圧倒されるだけではなく、自分に何が起きているのかを少しずつ捉えられることがあります。

もちろん、身体の感覚に注意を向けること自体が、いつも容易なわけではありません。身体に意識を向けることで、かえって苦しさが強くなる人もいます。

そのため、無理に感覚を探したり、つらい記憶に向き合ったりするのではなく、その人の状態に応じて、取り組む範囲やペースを調整することが重要です。

 

 

グラウンディングをしながら、自分の反応を眺める

 

グラウンディングは、今いる場所や身体の感覚に意識を向け、現在の自分を支えるための方法です。

たとえば、足の裏が床に触れている感覚を確かめたり、部屋の中を見渡したり、身体が椅子に支えられていることに気づいたりします。

不安や恐怖が強まったとき、こうした感覚が、自分を今の環境につなぎとめる助けになることがあります。

ただ、グラウンディングができるようになれば、それですべてが解決するというわけではありません。

大切なのは、今の自分を支えられる状態を保ちながら、自分の中で起きている反応にも少しずつ気づいていくことです。

過去の経験を思い出したとき、何が怖いのか。

身体のどこに緊張を感じるのか。

何を言われることを恐れているのか。

本当はどうしたかったのか。

そうしたことに、無理のない範囲で気づいていきます。

過去の経験に結びついた反応を、ただ抑え込むのでもなく、その反応に飲み込まれるのでもなく、今の自分が支えられる状態で眺めていく。

それは、自分の反応を理解し、その反応との関係を少しずつ変えていくための取り組みです。

 

 

トラウマケアでは、過去の記憶を詳しく話す必要がある?

 

では、こうした取り組みを進めるために、過去の出来事を詳しく話す必要はあるのでしょうか。

必ずしもそうではありません。

トラウマケアでは、過去の出来事を詳しく語ることを必須とせず、現在の身体の感覚や反応から取り組む方法もあります。

たとえば、ある話題に触れたときに不安が強くなったなら、そのときの身体の反応や感覚に注目することができます。

どこまで話すか、どのような方法で取り組むかは、その人の状態や希望によって異なります。

ただし、身体に注目する方法であれば、誰でも苦痛なく取り組めるというわけではありません。また、過去の記憶を扱うことが必要になる場合もあります。

大切なのは、特定の方法に無理に自分を合わせることではなく、自分の状態を尊重しながら、取り組み方を一緒に考えていくことです。

過去のことを話すのに抵抗がある方も、気持ちをうまく言葉にできない方も、そのことだけでカウンセリングを受けられないわけではありません。

 

 

トラウマを乗り越えることは、ただマイナスをゼロにすることではない

 

トラウマケアというと、不安や恐怖がなくなること、過去の出来事を思い出しても苦しくならなくなることを、回復の目標として考えるかもしれません。

もちろん、つらい反応が和らぎ、日常生活を送りやすくなることは大切です。

けれども、私が考える回復は、それだけではありません。

自分の反応を理解し、少しずつ自分で自分を支えられるようになること。

人の顔色や期待に応えることだけでなく、自分が何を感じ、何を望んでいるのかにも目を向けられるようになること。

そして、「本当は自分はどうしたいのだろう」と考え、自分の望む生き方を選んでいけるようになること。

そうした変化も、トラウマを乗り越えて生きていくうえで大切なことだと考えています。

過去の経験が、自分の人生に影響を与えてきたとしても、これからの人生のすべてが、その経験によって決められるわけではありません。

自分の反応に気づき、その反応に振り回されることが少しずつ減っていくと、自分の希望や選択に目を向ける余地が生まれることがあります。

何を大切にして生きたいのか。

どんな人間関係を築きたいのか。

どんなときに、自分らしさを感じるのか。

そうした問いに向き合い、自分自身の人生を生きていくこと。

トラウマからの回復は、過去の苦しさをなくすだけでなく、自分が本来望んでいた生き方を取り戻していく過程でもあるのだと思います。

 

 

身体の反応を理解することから、自分の人生を取り戻していく

 

過去の出来事は変えられません。

けれども、その経験に結びついた反応を理解し、今の自分を支える方法を身につけていくことはできます。

頭ではわかっているのに、どうしても反応してしまう。

もう終わったことなのに、気持ちや身体が過去に引き戻される。

そんなとき、自分を責めたり、無理に忘れようとしたりするだけでなく、今の自分に何が起きているのかを知ることから始めてみてもよいのではないでしょうか。

過去の記憶を詳しく話すことだけが、トラウマケアではありません。

身体の反応や感覚に目を向けながら、自分を支えられる状態で、自分自身への理解を深めていく。

そして、過去の経験に縛られるだけではなく、自分は本当はどう生きたいのかを考え、その方向へ歩んでいく。

その過程を、一人で抱え込まずに進めていく方法の一つが、トラウマケアの個人セッションです。

 

 

個人セッションのご案内

 

トラウマリリースでは、過去の出来事を詳しく話すことだけを前提とせず、身体の反応や感覚にも目を向けながら、一人ひとりの状態や希望に合わせて個人セッションを行っています。

頭では理解しているのに反応が変わらないと感じている方や、過去のことを話すのに抵抗がある方も、どのような取り組み方が合っているのかを一緒に考えていくことができます。

個人セッションについて詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

▶︎ カウンセリングの内容・詳細はこちら

▶︎ 個人セッションのお申し込みはこちら

 

松村まり|臨床心理士・公認心理師・SEP

心理カウンセラーとして25年以上、相談・支援に携わる。
トラウマケアと身体へのアプローチを軸に、心と身体のつながりを大切にした心理支援を行っている。

▶︎さらに詳しいプロフィールはこちら

トラウマリリースのお知らせを受け取る
JP EN